映画を見る前に小説を読んだが、短編『前哨』をベースにしたテーマの素晴らしさ、科学技術と天体の描写の素晴らしさに圧倒された(理系学生だったので)。神のような異星人がモノリスで若い種族の進化をモニタしているとうファンタジーな背景と、その一方で概ね既存の科学技術で土星系への到達を描いてみせるという現実的なハイテク描写の対比が面白い。後者のハイテク描写は半端じゃない。当時土星航行技術を設計して執筆できたのは、成熟したSF市場であってもクラークしかいなかったのではあるまいか。キューブリックのパートナーは彼以外にはありえなかったのだと思う。土星系の描写が素晴らしい(映画では映像技術的な問題で木星系に変更したと聞く)。その後ボイジャーが惑星をフライバイして映像を送ってきたが、私は書籍の2001年で既にその光景を見ていたように感じた。実際に2001年の元旦を迎えたときは現実の宇宙開発の有様を思うと悲しくなった。
金字塔的作品 映画とあわせて是非おすすめ度
★★★★☆
アーサー・C・クラーク氏が死去されたということで追悼で一冊。
アーサー・C・クラークときいて、ピンとこない人でも、この「20001年宇宙の旅」の名前を出すと「あぁ、その人知っている」となると思います。
太古の地球人類の祖先、ヒトサルに接触した謎の黒い石板。モノリスと呼ばれるそれに触れたヒトサルは骨を武器や道具として使う事で進化していく。そのモノリスが1999年月面で発見され、数百万年ぶりに太陽の光を浴びたモノリスは、木星に強力な電波を発信する。その先に何があるのかを探るべく、人工知能HAL9000を搭載したディスバリー号で5人の宇宙飛行士が木星を目指す。その航海の上で起こる、人口知能HALの叛乱。機械が人を殺すという事態も起こる不穏な空気の中、モノリスが示すものは、、、
ということで、何度もテレビでもやっていのたで、このモノリスやクラシックと宇宙空間の壮大な映像、眠る胎児などの映像を思いだす人でいっぱいだと思いますが、手あかがついていてもたとえ古い作品だとしてもこの作品は傑作だし金字塔的作品だと思います。
映画と違って、哲学的にあれこれと想像する余地は小説版の方には少ないですが、それでも読み応えがあります。続編として「2010年宇宙の旅」「2061年宇宙の旅」「3001年終局への旅」などあります。
ちなみに、このアーサー・C・クラークと「ロボット三原則」で有名なアイザック・アシモフ、「宇宙の戦士」のハインラインがSFの御三家と呼ばれていました。
長時間のフライトの機内で読みました!おすすめ度
★★★★★
この長編SF小説は皆さん読むべきだと思います!
ただ…モノリスを擬人化したらどうなるのかな、と思ってみただけで想像力を膨らませたりすると、そのうちモノリスに飲み込まれそうな感覚に浸っていくのには、くれぐれもご注意してくださいね(笑)。たぶん、見事に美しい女神じゃないかな、と思っていますが。
映画+本書=5点
おすすめ度 ★★★★★
本書は、キューブリック監督の同名映画とタイアップして書かれたSF小説です。
決して原作ではないのは、
冒頭の著者の序論及び巻末の饒舌な訳者解説を読んでいただければわかります。
本書が非常に価値があるのは、
不滅の名作とされるキューブリック作品が、
私のような庶民には難しい展開をしているようにしか見えないという苛立ちを、
ほぼすっきり解消してくれているといえるからです。
とはいえ、本書に現れる世界を頭の中に鮮明に描くことができるのは、
ひとえにキューブリック作品の美しい映像のおかげだというのもまた事実です。
したがって、本書と映画とを合わせて5点満点を献上させていただきます。
さて、内容に関して私がポイントだと思ったのは、
地球外生命体が必ずしも私たちが認識可能な形態をとっているとは限らないということです。
その観点からすると、スターウォーズやET、エイリアンなどのよく知られたSF作品が、
いかにも子供だましに見えてしまいます。