大正浪漫的な「綺譚」 おすすめ度 ★★★★☆
栗本薫好みの大正浪漫的なものと、現代的な孤独な老人の問題、大人になりきれない「夢見る夢子さん」といったいくつかの要素が組み合わされた作品になっています。
タイトルにあるように、「木蓮荘」と言う旧い邸宅が舞台です。そこに住むのは、80歳になるピアノ教師とお手伝いの老女の二人です。
その周りを散歩する伊集院大介は、そこで娘を捜す婦人に出会います。そこから、過去の3つの少年少女の失踪事件が浮かび上がります。
伊集院大介の苦渋に満ちた推理が展開されます。
非常に雰囲気のある作品です。
しかし、推理小説の楽しみという点では、怪しい人物が限られてしまうため、結果は見えてしまいます。
従って、この作品は謎含みの文字通り「綺譚」として読むべきだと思います。そうすれば、十分に楽しめる作品だと思います。
|