「組織なんて二の次ですよ。優秀な人材をあつめればいいんです。」と言って憚らない人はたくさんいる。だが、この本を読むとそうではないことが分かる。過去にいくらでも誤った例があるのだ。
素晴らしい!おすすめ度
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とても13年前に書かれたとは思われない新鮮さがあった。堺屋氏は「団塊の世代」などの流行語{今では常識}を作ったことでも有名であるが、本書は組織というものを本質から議論している名著である。最初に過去の歴史の失敗した組織のケーススタディが3つ載ってあるが、あの氏独自の分析力には圧倒された。例えば戦後から1960年代までは石炭産業がエリートコースであったが、石油の出現によって完全に滅び去ったという事例が載っている。石炭産業から石油産業への転換は一般教養レベルだが、石炭産業が戦後直後には東大生の就職人気ナンバーワンであるなんてことは全く知らなかった。
次に当時はほとんど研究されていなかった{現在は知らないが}組織の本質に迫っていく。この部分は本書で一番抽象的だが、具体例なども引用されており、そんなに読むのが苦ではなかった。
最後に利益質とヒューマンウェアという氏独自の造語を用いて今後のあるべき組織を論じている。
読んだ人の中には{特に経営者や中間管理職の人}抽象的過ぎて実践では使えないと思われる方も多いと思うが、逆に抽象的だからこそいろいろな分野に{つまり具体的に}適用できると思う。
組織だって・・・『奢れる者は久しからず。盛者必衰の理をあらわす。』おすすめ度
★★★★★
前半のケーススタディー部分は、官僚、戦国時代、帝国陸海軍、警察、中国の漢など、広く考察しており、歴史観にあふれ、かつ本質を喝破していると思います。
筆者自身の弁によれば、「組織についての学問的研究があまり進んでいない、現代の組織を研究するには機密の壁という障壁があり難しい。」とのことでしたが、確かにその通りだと思います。
しかしながら、本書の発刊後の時代は、「バブル崩壊と日本経済の低迷」「年功序列と終身雇用の崩壊」「ルノーにる日産自動車のM&A、ゴーン社長によるV字回復」「金融自由化・護送船団方式からの決別」etc. があり、様々な組織研究のケーススタディ本が発刊されているように思えます。それは、時代の変革期において、誰もが、暗闇の中の光明を求めているからだと思います。
金融ビックバンとか、○○民営化とか、公務員の天下り問題とか、U印乳業の食中毒(食品安全管理の形骸化)、M菱自動車のクレーム隠蔽。。。新聞の第一面を賑わしている構造改革と不祥事というものは、組織論的に見ると、すべて「共同体」組織から「機能体」組織への変化が根底にあると、私には思えます。最近10年の日本を振り返れば、堺屋さんの先駆的な慧眼に感服するばかりです。
そういえば、こんな格言がありますね。 『歴史は繰り返す。』
本書的に意訳すると・・・
旧組織に対抗して勢力を伸ばし、やがては旧組織を滅ぼしてしまう新興組織も、時間が経てば、また新たな新興組織に滅ぼされてしまう。常に自己変革をしつづける組織だけが生き残ることができる。
『奢れる者は久しからず。盛者必衰の理をあらわす。』