結構気に入ってますおすすめ度
★★★★☆
原作は読んでいないんですが,夏目漱石の「こころ」のヴァリエーションですね.この三角関係物語の金字塔が作ったパターンを踏襲するしかないのは,劇作家が,どんな物語を作っても,「シェークスピアのXXXに似ている」と言われてしまう状況とよく似ています.(本人が意識しようとしまいと・・・)
で,この作品ですが「こころ」と違って,ラストは転生を暗示させることでの,明るさを入れたものになります.もちろん,誰も「こころ」そのものを再現してほしいわけでないので,この「転生」のラストは,気に入りました.
物語の展開も,分かりやすくて,ああ次はこうかなと思うと,本当にその通りになるので,安心して見てられました.(ラストシーンにつなげたいだけなのでしょうか)作り手は確信犯だと思います.
窪塚洋介とエディソン・チャンが,よい演技をしています.また,三角関係の軸となるエミーは,物語にとってある意味どうでもよい存在であるところは「こころ」の場合と同じなので,黒木メイサ程度の演技でも気になりませんでした.
微妙
おすすめ度 ★★★☆☆
正直微妙です。窪塚洋介は前よりすごくよかったです。が、話自体がぼんやりとしていていまいち入り込めませんでした。やりたいことはわかるような気がしますが、もう少し人物描写をしっかりしてくれた方がよかったかな。
概要
土田世紀の、ヒリヒリと心が痛くなるコミックを、魅力的なキャストで映画化。窪塚洋介が、それまでのイメージとは異なる役どころで、エディソン・チャンが日本語のセリフに挑戦している。幼なじみだった鉄矢とドン、そしてエミの3人。ところがエミの家が焼失し、その原因を作ったとしてドンは逮捕される。7年後、エミの心臓病を治すために、医師を目指していた鉄也の前に、刑務所を脱走したドンが現れる。
微妙に思いがすれ違う3人の関係を追いながらも、物語はドンの逃亡劇に重きが置かれる。ドンの出演場面が多いわけではないのだが、少年時代からの不思議な能力や絵の才能が、脱走後のシビアなドラマに絡んでいくのだ。つまり、これは「不在」のドラマ。鉄矢とエミが、子ども時代に体験した親友の喪失は、最後までふたりの傷となって消えることはない。残念なのは、脚本や演出が登場人物たちの心情を深くまで伝えきれていないところ。演技は、みんな健闘しているのに! 3人それぞれが眺める半透明の月や、一面の花畑などの映像が、悲痛な展開にリリカルなテイストを加味している。(斉藤博昭)