バブルを理解する一冊。金融業界の文化を理解するおすすめ度
★★★★★
記憶にも新しいですが、長銀(日本長期信用銀行)が米国の外資系ファンドに買収され、新生銀行になるまでの過程を小説風に当事者達の視点から描かれております。
本書の素晴しい点は、長銀を取り上げていますが、日本の銀行が戦後どのような役割を持って政府によって作られ、役割を期待され担ってきたのか。そして、80年代の誰にも止める事ができなかったバブル。政府が悪いのか、システムが悪いのか、銀行の経営者が悪いのか、企業が悪いのか。と言った、銀行の歴史、文化、銀行経営の考え方なども書かれている点がひとつ。
そして、2点目は小説風に書かれているため、飽きずに読み進める事が出来る点。特に長銀の頭取であった大野木氏については、長銀入行からイギリスでの駐在、経営企画部など経て頭取になり、逮捕されるまでの人生、ドラマがあり非常に興味をひかれます。銀行の向かう方向性に矛盾を感じ、声をあげるも実現できずに、社会・時代の流れに流されていく葛藤が描かれています。
前半は長銀が上記のような歴史を経て、買収される経緯。後半は外資系の投資家達が旧長銀、新生銀行をいかに立ち上げるか、日本人との文化的な対立や、政府の対立・交渉を通じて、日本に新しい風を吹き込もうとする想いと難しさが、これも登場人物の視点から描かれており、面白く読めます。
日本の金融機関で働いている方は既読かも知れませんが、働こうと思っている方や金融機関を相手にビジネスをされている方などにお勧めです。また、バブルをあまり知らない世代(今20代中盤以前)の方にもバブルがどのようにして起こり、崩壊していったのかを理解するうえで、ためになると思います。
New Lifeおすすめ度
★★★★☆
I thought that this book was rather well written and the story was very well written. For anyone that is willing to hear the rise and fall of one of Japan's great banks, then this is the book. It can also given insight into the future. Since Japanese banks don't function similarly to Western ones, ideas can come from this book.
勉強になりますおすすめ度
★★★★★
読んでとても勉強になりました。
とてもきちんと取材してあります。
企業のリスクを評価し、「リスクテイク」ということがどういうことかがわかります。
経営者としての情報力、コミュニケーション、根性、孤独、人生観が織りなす壮絶なドラマですね。
プライベイト・エクイティの世界おすすめ度
★★★★★
新生銀行はプライベイト・エクイティビジネスの
最も成功した例であるといえるでしょう。
プライベイト・エクイティの中には、
利益移転を行うだけの、いわゆる「ハゲタカファンド」的なもの
もたしかに含まれる。
しかし、プライベイト・エクイティはそれ以外に、
企業を再生し、それによって自身のファンドも利益を得る
そういう形のアプローチももちろんある。
そして、新生はこの典型的なパターンだ。
浅はかな分析をする人は、
政府のつけた「プット条項」を噛み付いて、
リップルウッドを「ハゲタカ」と片付けて、
問題の本質に全く触れることがない。
しかし、本書はその点を十分に踏まえ、
日本のジャーナリズムにはよく理解できなかった、
(彼らは「ハゲタカ」と書くのが大好きだ。)
プライベイト・エクイティの、
本当の姿を描き出している。
この点で、この本は非常にすばらしい。
アメリカで盛んになったプライベイト・エクイティが
日本でも本格化するかどうかは分からないが、
このビジネスは、日本においても確かな機会があり、
それを本書は紹介してくれているように思える。
この10年は何だったのか?おすすめ度
★★★★★
バブルという時代を客観的に記録した書物として意味があるのではないでしょうか?入社5年目に満たない若者が、20万円のスーツを身に付け、安物を着る人間を馬鹿にした時代でした。当時の上司から「今は英語を勉強しなくても、アメリカもヨーロッパも日本を見習い日本語を勉強しているのだから、無駄な英語の勉強はやめた方が良い」と言われたのを覚えています。
その背景になった土地への投機、融資を行っていた銀行がどのように物事を進めていたのか分かります。紋切り型にアメリカ式経営と日本式経営と2つに分けて考える層の単純さも面白く描かれています。市場原理の冷たいアメリカ式と言いたいのでしょうが、セーフティネットがしっかりしていて人口一人当たりの社会保障費用が日本より高い環境を背景とした経営手法を日本に持ってくるなというなら理解します。
金融のビッグバンの前にアメリカに阿らないで、日本には独自のモデルがあると言い切れなかった弱さが徐々に露呈していく様は、別な分野でも同じ轍を踏まないよう警笛を鳴らしていると感じます。