平井コーチが,北島選手とのアテネ五輪までの歩みを綴った本です。精神的な力は大事ですね。気持ちと体が噛みあうというのが大事なんですね。スポーツだけの話じゃないですよこれは。
長期目標に基づくコーチングの姿勢、水泳以外の分野でも有益!おすすめ度
★★★★★
まずは、北島さん・平井コーチ、アテネの金メダル、本当にオメデトウございます。(団体の銅メダルも、本当にオメデトウございます)
この本はオリンピック前に脱稿された本で、「金メダルを獲る。この夢だけは譲れない」と明言されており、まさに「有言実行」です。そこに至るまでの8年間の軌跡がコーチの視点から書かれています。
オリンピックは階段を一歩一歩上がった延長線上にあるのでなく、最初からオリンピックを狙わないと見えてこない(最初の志の高さが到達点を決める!)。その為には大きな長期目標を最初に設定して、その実現に必要なことを抽出し、短期目標へbreakdownすること(今すぐジュニア新記録を更新するのではなく、アテネ前に日本新/世界新を目指す、決して結果を急がない)。選手の自立性を高めるために、教えすぎず、教えなさすぎず(試合後、コーチが話すのは、選手のコメントを待ってから)。なぜ出来ないかより、なぜ出来たのかを考える。
この辺りの記述に触れると、スポーツに限らずビジネスの世界でも役に立つ側面があることに気づきます。例えばビジネスの「目標管理」は1年単位なことが多いですが、目標と手段を取り違え、長期目標(ビジョン)なく年単位の数値目標を掲げてしまうと、小さくまとまってしまい大きな飛躍は望めません。「慌てず焦らず諦めず(柴田亜衣選手の名言)」、大きな目標(夢)に向かって、無理なく頑張ること(そんな自分を楽しむこと)の大事さを教えられました。「やる気があるから失敗する、失敗の数だけ成功に近くなる」という記述にも勇気づけられます。
この本は「ホワンの物語」を読んだ後に読んだので、多くの共通点を見付けることが出来ました。アクシデントをもチャンスに転換する心構えが読み取れます。報道では「金メダル(花)」という結果は強調されますが、報道ではあまり語られない「金メダルに至るプロセス(幹、根)」こそが重要です。そのような金メダル獲得までの軌跡に、成功哲学の一側面が現れており、爽やかな読了感が得られました。