2008年2月、ライブドアとは関係のない事件(ICF社の偽計取引事件)で著者は逮捕された。その後、不起訴処分になったようだが、問われたのは不当に高い価格の株価鑑定書を作成したことによる罪で、本書の出版以前の業務についてである。なお、その際の報道では「公認会計士田中慎一」とされていた。本書で高らかに宣言された公認会計士資格の返上はなされなかったようである。そのようなことも考慮しながら読んでいただきたい。
個人的にはライブドア事件は、純粋に会計不正事件としてとらえれば、極端に悪質なものではなかったように思っている。著者も本当はそう思っていたのではないだろうか。問題視されていないもっとひどい話が当時はたくさんあったじゃないかと。また、著者は経歴を見る限り30歳そこそこでライブドアの監査報告書に署名をすることになったようだ。色々書いているが、内心は嬉しかったはずである。そんなことも考えながら読むと面白いかもしれない。
本書自体は、やや皮肉を込めて言えば「優等生の反省文」としてよく書けている。(本書の出版自体が重大な守秘義務違反であることを除けば)内容もごもっともなものである。読む価値はあると思う。文章も緊迫感がありながら平易であり、読み手は選ばない。
本当の巨悪はどこにあるのかおすすめ度
★★★★☆
ホリエモンと慕われメディアから時代の寵児と言われた堀江貴文元ライブドア社長。
彼は不正な株操作を行ったとされ逮捕されました。
しかし一方でその後でそれよりもっと規模が大きくて悪質な日興コーディアルは5億円の追徴課税のみで済み、
検察も動かずたいしたお咎めもなかったのです。
ライブドアはメディアからこれでもかと言うくらい叩かれて上場廃止になったのにコーディアルは未だに上場しています。
また最初に報道される数時間前から盛んに株価が動いていたのも奇妙な点です。
ホリエモンが言いました。「人の心は金で買える」と。
これにはもうひとつの意味があって金で買えないものがある限りそれは差別を産む、という自らの貧しい出身を反映したものだったようです。
ホリエモンもまた違法なことを行ったのは事実ですが、実際には既存メディアの敵とみなされ
本来の必要以上に叩かれ、発言がゆがめられて報道されていたのも事実です。
実はカラ事業とされていたホリエモンのビジネスも意外に意味があるものでした。
海外の後に大人気となり世界中でヒットしたゲームを人気が出る前から日本で権利を取って
日本語でローカライズしたり、近年普及してきたLinuxOSを日本では数少ない販売会社として
権利を取ったり、無線LANを東京を覆わせて東京中で安価でどこでもネットができる環境にしようとしたり、
そしてなによりTVを従来の形から変えようと、あるいは潰そうとしていたのです。
TVというメディアはあらゆる利権にまみれています。
ここ数年のTVは視聴率、制作費、視聴者数が大幅に落ち込み明らかに質も低下しています。
ホリエモンが「このままではTVは終わるからネットと融合させて変えないといけない」と数年前に発言したときは
誰もそんなのは信じなかったでしょう。でも今はどうでしょうか?
TVを見なくなった若者が凄く増えているのです。
現在は娯楽があふれているので今時受身のTVなんて陳腐化しているのも事実です。
現に中国などでは60チャンネルあったりアメリカやイギリスなどでもネットでTV番組が配信されてたりするのに
日本では未だにネットを拒んで妙なコピーガードを付けたりする始末です。
個人的にホリエモンがやった中で一番評価したいのは宇宙ビジネスです。
確かに30年も前のソ連のロケットを買っただけではありますが、今時日本に1企業が宇宙に
乗り出そうとするなんてまずありえません。でも子供からするとこれほど夢を感じさせる
行為はないでしょう。どこまでホリエモンがやろうとしていたかは謎ですが、私も子供心にわくわくしていました。
今の夢も無く未来も見えない、ただ内側から腐っていくのを待っているだけという状況の日本では
ホリエモンみたいな経営者が理想とは思えませんが、少しは政治やメディアに関与しないと
どんどんおかしくなっていくのではと思いました。
面白いですおすすめ度
★★★★☆
私は公認会計士を目指している身なので、座学とは違う、現場での監査というものを垣間見られた気がしました。展開が速く、読みやすくて、飽きない本だと思います。
ただ、他の方も書かれていますが、自己弁護本のように思いました。
公認会計士としての自分の責任を明確化した上で、違法行為に荷担しなかったから、自分には責任がないというのが裏の主張のように感じられてなりません。
確かに、監査人としての権限や能力に限界があり、監査基準にも公認会計士の限界と責任の範囲を明示しているので、改めて自分の責任の範囲を世間に明確化する必要はあると思います。会社側に違法の事実を組織ぐるみで隠蔽されてしまっては、公認会計士も対処のしようがないありません。私も公認会計士の勉強を始めるまでは、監査という仕事を勘違いしていたので、元監査人の著者が世間に本当の自分の責任の範囲を示したい気持ちも察します。
ただ、プライドが高いのでしょうか、自分に責任はあると書きつつも、文章の雰囲気からそれが建て前のように感じてしまい、少し鼻につくところもところどころありました。
以上のように、自己弁護本ではあると思いますが、本全体としては、ライブドア事件の舞台裏を詳細に書いた本であるので、一読の価値はあると思います。
真相は当事者じゃないと分からないけど
おすすめ度 ★★★☆☆
真相は当事者じゃないと分からないので、なんともコメントのしようがないけれど、「分かってたけど、自分だけは何とか不正を止めようとしてたんだ!」という著者だが、この本を通じて伝えたかったことはなにか?結局自分は事件とは関係なかったんだ、と人によってはそう捉えられてしまったとしても仕方ないだろう。
もちろん、このようなことが起こらないようにと、他の会計士に対しての戒めもあるだろうが、なんとなく、著者が「告げ口」をしてるように感じてしまうのは私だけではないだろう。