岡本喜八流!痛快戦争映画!!おすすめ度
★★★★☆
岡本喜八監督には命のエネルギーを感じさせる作品が多くあります。この作品も魂の叫びといった印象を受けました。太平洋戦争終戦間際の東南アジアを舞台にした戦争物ですが並の映画ではありません。岡本流に戦争をかみ砕き、戦争を知らない世代へと投げかけてきます。製作されたのは昭和40年の作品ですが、戦後から20年をたち戦争を実体験した現役世代と、未体験の若者世代がせめぎ合う時代であり、この頃の戦争映画には魂がこもっている作品が多く見受けられます。現在では確かにCG技術の発達によりリアルな映像表現はされていますが、何か薄っぺらさを感じるのは製作者サイドに戦争体験者がまったくいないせいでしょう。岡本流の戦争はとてもコミカルでユーモアがありながら、やるせなくも悲しい内容です。決してリアルではありません。戦時中にも関わらず敵性音楽ジャズと敵性言語英語が作品で使われているのは設定は変ですが、戦争をスピルバーグ調に単にリアルに表現するのではなく、シニカルに捉える岡本流の表現なのでしょう。温故知新といいますが、最新のCG映画を享楽するだけではなく、改めて昔の映画を鑑賞すると今の映画には到底ない味わい深さがあります。味のある映画とそうでない映画の違いは、鑑賞後数日経っても映画の味がアタマの中に残り続けるか否かです。味わい深い映画をどうぞ。ちなみにジャケットはカラーですがモノクロ映画です。星が−1なのは特典の仕様。岡本氏が作品について語る特典がありますが、居酒屋での録音が聞き取りづらい上に音声付きの映画の画面をかぶせているので会話が更に聞き取りづらい。映画シーンを抜いてピンナップなどの静止画だけで聞かせて欲しかった。DVDの作り手のセンスが疑われます。
いよいよ来たか
おすすめ度 ★★★★★
ホントにメジャーじゃないし、ホント人気もないようだけど、これはまさしく本物の映画です。賛否はあるかもしれない、喜八本人は違うと言うかもしれないが、私は独立愚連隊や肉弾よりすごいと感じています。
はじめ戦い方等、まるでわかるはずもなく少年軍楽団として曲を引き続ける彼らは、熱く暖かく引っ張ってくれる曹長(三船敏郎)達によって兵士として、人間としても成長しようとするわけです。しかし戦争という災禍はお国のためとはいえ、生きたいと望んだはずの彼らを決して見逃してはくれませんでした…。
最後の銃撃戦のシーンで軍楽団が奏でる曲は、断末魔の叫びでもあり、彼等自身へのレクイエム(鎮魂歌)でもあったように思います。この場面は声も出ませんでした。そして最後の慰安婦の言葉。この場面にこの映画が訴えたかったすべてがあるのです。
出演者は文句なし!もっと評価されるべき傑作です! 最近の興行記録ばかりが重視されたカラッポの映画ではなく本物を見ませんか?
概要
昭和20年夏の北支戦線で、歴戦の勇者・小杉曹長(三船敏郎)は佐久間大尉(仲代達矢)の命により、八路軍の猛攻によって全滅したヤキバ砦の奪還に向かった。従えるは、何と軍楽隊の少年兵たち。今まで楽器しか持ったことのない彼らを叱咤激励しながら、小杉は砦の奪取に成功するが…。
『独立愚連隊』などで戦後日本の娯楽映画に新機軸を打ち立てた岡本喜八監督が、戦争と音楽をモチーフに繰り広げる異色戦争アクション映画。そもそも戦争ミュージカル映画を撮ることを宿願としていた岡本監督は、ここでその前哨戦として、リズミカルなテンポと軍楽隊が奏でるジャズの調べを巧みに融合させ、ダイナミックかつ悲壮なアクション描写とともに「おもしろうて、やがて哀しき」人の世を追求していく。また、岡本映画を語る上で絶対に外せない「昭和20年8月15日」のモチーフも、ここではラストで本格的に表れている。名優・三船と少年兵たちとのさわやかな交流、少年たちを男にしてあげる慰安婦役・団令子の哀しみなど特筆すべき点も多々ある傑作である。(増當竜也)