映像と音楽の稀有の一体化おすすめ度
★★★★★
フェリーニ=ニーノ・ロータとはずいぶん趣が異なるが、テオ・アンゲロプロスの映画にはエレニ・カラインドルーの音楽が不可欠である。いまやそれは映画の重要な一部になっているといっても過言ではない。
アンゲロプロス映画の音楽をカラインドルーが担当したのは「蜂の旅人」からだと思う。1982年にある映画祭でカラインドルーの音楽に接した監督は、その場に出席していた作曲家に即座に仕事を依頼したという。その後「シテール島の船出」「霧の中の風景」を経て、「こうのとりたちずさんで」「ユリシーズの瞳」と次第に両者のコラボレーションの密度は深まり、「映像と音楽の稀有の一体化」を実現してきた。
そして、その頂点をなすのが、この「永遠と一日」である。映画を見た人なら、音楽がいかに主人公(ブルーノ・ガンツ)の心の微妙な襞々に寄り添っていたかが理解できるだろう。このCDを聴くたびに、私はアルマーニのコートに身をやつした、人生最後の一日を過ごす男の姿がまざまざと浮かんでくる。
その一方で、この音楽の完成度はどうだ。ギリシャの民族音楽の研究家でもあるカラインドルーは、郷愁あふれるローカリティのなかに地域や時代を超えた普遍性を獲得している。現代ギリシャの生んだ優れた現代音楽としても高い評価が可能であろう。実際、これは単なるサントラ盤ではなく(そしてカラインドルーの全作品が)、アルヴォ・ペルトやクルタグなどの作品で知られるECM New Seriesからリリースされている。
アンゲロプロスの最新作「Weeping Meadow」(Trilogy Ⅰ)の音楽も、もちろんカラインドルー。すでにCDが発売されているが、これも素晴らしい出来映えである。ギリシャではポップチャートの上位にランクインしたとか。映画の公開を待ちわびるや切である。
それはどうして時間というのだろう?
おすすめ度 ★★★★☆
あなたは、時間とよばれるものについて考えた事がありますか?それは進むものでなくましてや戻るものではない。私の耳をとおして感じるこの映画のサウンドトラックは、どの空間から流れてきたものなのだろう? 永遠という言葉の意味するものはまた、そこにあるものなのかないものなのか。長く『続く』ものを永遠とするのも、また終わりのないものをそうとするのもいいでしょう。
私たち言葉をもつものが与えたこれらの概念の浮雲的な、超空間的なあやふやさを映画の場面とともに響かせてくれるCDです。