マンガに魅かれて買ったクチだけど…おすすめ度
★★★★☆
マンガ版に対する小説版としてこの本を捕らえてはいけない。
マンガの方は、この小説のバージョンアップ版だと考えて欲しい。
すでにマンガである程度のあらすじと時代背景を知っていると、
数ページに渡る説明は苦痛でしかない。
戦況説明、武器解説、背景解説のどれも、マンガの簡潔さを思い浮かべると
不要だと思えてきてしまうのだ。
また、小説では新城以外の人間がまったく感じられず、寂しい。
というのも、小説は新城の観点と状況説明のみで進み、
他のキャラも新城を通してしか語られないからだ。
逆にいえば、マンガのほうは、絵として出演させられるという
アドバンテージに加え、小説の方の説明や解説を
セリフとしてしゃべらせたり、顔で性格を語らせたりと
キャラ立ての工夫も極めてうまくやっていることがわかる。
SFな仮想戦記物としては、この説明量はしかたがないのだろうし、
脇役や敵役まで書いていられないのかも知れないが、マンガの方を見ていると、
もっとうまく出来たのではないかという考えもわいてくる。
仮想戦記物として見て、星4つの評価としたが、
マンガを見て、この小説を見た場合、たとえばこの小説が、
マンガの小説化であったとすれば、星2つあれば良い方だろう。
マンガを読んでよほど世界観が気に入った方か、さもなくば
マンガをまだ読んでいない仮想戦記好きにはおすすめできる。
ありそうで無かった、仮想ファンタジー世界近代戦の傑作おすすめ度
★★★★☆
戦争を舞台にした英雄の叙事詩である。
日本をモデルとしたような「皇国」とロシアをモデルとしたような「帝国」。
剣虎兵や導術、龍が登場するというファンタジー的要素を持つ世界で、
両国の近代戦が描かれている。
まるで日露戦争の様ではある。
中身は全く違うが、知らない人にはイメージしやすいであろう。
ファンタジーでは、とかく剣と魔法で完結していて中々近代戦を描く機会はない。
本作では、想像力豊かな著者が、得意の戦争知識を総動員して、
社会状況から火器、戦略、戦術を詳細に組み立てて描いたものである。
世界設定、登場人物、それぞれに魅力的であり、時々難しい言葉も出てくるが、
総じて分かりやすい文章だ。
9巻も出ているので、ほぼ完結だろうとたかをくくって全巻購入し、
一週間で読んだが、まだ「続く」かよっとびびった。
前半、1~4巻ぐらいまでは非常に良く出来たつくりで面白いのだが、
後半から少しずつおかしくなってきたように思う。
設定が少しずつ変ってきており、主人公の直衛もなんだかなぁ、
というキャラクターになりつつある。
純粋なイヤラシサが減り、歪曲したイヤラシサになってしまった。
途中まで読んでしまったので、続きを読みたい気もするが、
1巻を読み終わった時に感じた次の巻を読みたい誘惑は、もうない。
世界設定から、登場人物まで魅力はあるので、
戦争系のお話が好きな方は、お時間のあるときにぜひ読んでみてください。
完全な架空世界における戦争小説
おすすめ度 ★★★★★
著者はWWIIを題材とするウォーシミュレーションゲームのデザイナであり、現在は仮想戦記小説を主なテリトリとする作家である。だが、この作品は現実社会とはまったく関係のない架空世界における戦争小説だ。技術水準はほぼ19世紀中葉、大陸国家である超大国「帝国」と海洋貿易国家「皇国」の戦争を描く。帝国がロシアであり、皇国が日本をモデルとしていることは言うまでも無い☆絶望的状況下に置かれた中隊指揮官の奮戦が1巻では描かれる。彼は殿として、友軍退却の時間を稼がなくてはならない☆佐藤節とも言われる、本筋中に途中に突如として入る、長々とした人物紹介はいつものとおりだが、今回はそれほどしつこくない。完全な架空世界にしたことで、著者はフリーハンドを得、「北海道におけるロシア軍迎撃戦」や「フィンランド的焦土作戦」を自由自在に描いている。剣牙虎兵、導術兵といった異国趣味もおもしろい。