懐かしさと新しさと おすすめ度 ★★★★★
「魔法使いチャッピー」は、私が初めて「リアルタイムで」見た「魔女っ子アニメ」だった。今回DVD化されると聞いて、真っ先に注文した。
三十数年前の番組であり私自身も記憶が曖昧だったが、今回鑑賞して記憶の片隅にあった番組の断片に触れることができた。
かすかに憶えていた場面を見つけ出し、懐かしさに胸が詰まった。
そして気づいたのは、テーマが意外と硬派である点。主人公が憧れを抱いて降り立った人間の世界は汚れきった空に覆われ、
悲惨な事故や凶悪な事件が後を絶たなかった。
番組が放映された1972年は高度経済成長の末期だった。公害や交通事故が社会問題となり、浅間山荘事件などの凶悪犯罪が
世間を賑わせていた。一方で沖縄が復帰し、田中内閣による「列島改造計画」がバラ色の未来を振りまいていた。
主人公たちは、そうした社会の変動に否応なしに巻き込まれてゆく。当初「魔法使いから見た人間界」というスタンスで
作られていたエピソードは、次第に「子どもから見たオトナの世界」という色合いを濃くしていった。利己的なオトナたちの
犠牲になる子どもと自然。チャッピーの父でさえ、選挙に無関心という点では「無責任なオトナ」である。
それでも番組では、子どもの純真さに打たれたオトナたちが最終的に改心する。チャッピーの魔法は、
子どもの幸せとオトナの改心、そして両者の和解へのきっかけとして行使される。
三十数年前の制作にもかかわらず、地上げや自然破壊など現代を予見したかのようなエピソードも少なくない。単に70年代前半という
時代を振り返るだけでなく、混迷の度合いを深める現代を生きる上でのヒントとして、一人でも多くの方に見てほしい作品である。
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