あまりにも有名で、映画化もされた作品であるが、推理小説としては、謎を解き明かしていく要素は実は案外少ない。常々犯人を当てることを楽しみにしている私にとっては、正直無理な作品だった。というのもそういう構成だったからとしか言いようがない。この作品の伏線にはアメリカでの誘拐殺人事件があり、そこが作品のポイントになるのだが、そこからの展開を素晴らしいとみるか、そうでないと見るかで読者の感想は別れると思う。星5でなく星4にしたのもそういう意味で私は「プチがっかり」があったため。だけど、人によれば、それを大仕掛けの筋書きと評価するかもしれない。推理小説であることを期待した人にはがっかりかもしれない。これは物語性が強い。メッセージ性が強すぎると思う。筆者の正義感は感じるんですが。。。読んで面白かったです。だけどアガサの他の作品と比べればやや落ちると思う。
面白いのは面白いけど...。おすすめ度
★★★★☆
本書はクリスティー作品中でもとくに人気の高い、「一般受け」す
る作品だが、私はクリスティー作品としてはあまり高く評価してい
ない。少なくともベスト10に入る作品とは思わない。
ミステリー・ファンには大別して2種類あり、一つは謎を読み解くた
めに途中で何度も立ち止まって考えながら読み、見事に謎を解き
明かすことに、あるいはその反対に、見事に作者にだまされること
に快感を覚える、いわゆる「本格」推理ファンである。
もう一方のファンは、流れにまかせてとにかくストーリーを楽しむ人
たちで、多くは例えば宮部みゆきや東野圭吾、あるいは西村京太
郎やもっというなら赤川次郎など、2時間ドラマ向きの作品が好み
のように思う。
ところで本書だが、積雪により外界から閉ざされた列車の中で起
きる殺人で、死体には大小12ヶ所もの刺し傷があり、そこへ名探
偵ポアロが登場、容疑者たちも様々な国籍・職業の者たちが揃い、
被害者の過去には未解決の誘拐殺人事件が見え隠れするという、
いかにも一見すると前者に属する作品のように見える。ところが実
は本書には謎解きの要素は少ない。
ポアロは容疑者たち一人ひとりが、誰もが殺人の動機を持つこと
を暴き立てるが、それは推理というよりもほとんど「勘」によるもの
で、読者は立ち止まって考える余地がなく、せいぜい、前のペー
ジに「ああ、こういうことが書かれていたんだな」と確認するぐらい
で、後は2時間ドラマのように結末まで流れにまかせるよりない
のである。
だからこの作品は、確かにストーリーは面白いし、結末の意外性
も楽しめはするが、謎解きを楽しみたい、いわゆる本格推理作品
のファンからすると、ちょっと物足りないものがある。
しかし逆に言うと、ガチガチの本格派の作品は敬遠するが、気軽
にストーリーを楽しみたい2時間ドラマ派やミステリー初心者には
充分楽しめる作品だと思う。
ちょっと期待はずれおすすめ度
★★★☆☆
意外な犯人で有名な作品ですが、あまりに有名すぎてもはや意外ではなくなった感じがします。
殺人、捜査(尋問)、解決というオーソドックスな3部構成になっていて、現在のスリラーに慣れた眼からすると、テンポがゆっくり過ぎると感じる方も多いと思います。
また肝心の推理も、緻密に論理が組み立てられるというよりも、「実はあなたは○○でしょ」という感じの当てずっぽうな予測がたまたま当たってたという印象のほうが強く残りました。
もちろん、このような部分は表層的なものと考える人も多いと思いますが、論理性を追求する人や、スリリングなシーンの連続を期待する人にはあまり向いていないと思います。
あと、原書で読もうという方は、フランス語が多用されているのでお気をつけ下さい。分からなくても筋を理解する上で支障は無いはずですが、気になる方は講談社から出ているルビーブックスならフランス語に日本語訳のルビが振ってあるので、そちらをお勧めします。
アガサクリスティーの世界に浸ってください
おすすめ度 ★★★★★
ポアレシリーズは沢山読みましたが、この作品はシリーズ1冊目ということで読んでみました。その結果は・・彼女らしい素晴らしい作品でした。最近の推理小説は、過激な描写が多いため気持ちが暗くなる事が多い。それに比べ彼女の作品は全て、古き良きイギリスの美しい舞台と、女性らしい上品さ、心理描写の細やかさ、ユーモアが魅力です。この作品もそんな彼女の世界を期待通りに描いており、特に、最後の最後の単語を読み終わった時に、ほっとした余韻を味わえました。どうぞこの作品で、彼女の世界に浸ってください。 また読まれる Tino Georgiou--The Fates