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オデッセイ1966~2003―岡田史子作品集 (Episode1)

岡田 史子
おすすめ度:★★★★★
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これは「美しい」と言っていいでしょう
おすすめ度 ★★★★☆

萩尾望都さんが「天才」と崇めた伝説の漫画家。一方で呉智英氏がその作品に内在する「幼稚な正義感」を批判したりもしました。確かに万年思春期症の独善性が充満する世界ですが、私は萩尾さんの肩を持ちます。岡田さんの提示するテーマ性には興味はありません。精神病院でボードレールの『悪の華』を諳んじる少年とか、『赤い蔓草』の陰気な芸術家兄ちゃんの示唆する「市民対芸術家」的なテーマとか、いずれも「ギャー!」と悲鳴を上げたくなるくらいのものですが、それら全てを乗り越えて、岡田史子さん、絵が素晴らしい。
彼女の作る画面には「魔」が潜んでいます。加えて、この妙な言語的迫力。絵と言葉の力に押されて「なんなのこれは?」という作品群を読み切ってしまえる。そもそも無きに等しいストーリーに乗せて浪漫主義と深刻趣味と芸術趣味を披露しまくってなお全く安っぽくならない、という辺りからして普通の才能ではないです。普通ならこんな思わせぶりな台詞やら思念やらがとぐろを巻く世界には誰も付き合いません。別にキャラに魅力がある訳でもなし。すごいなぁ、才能というのは。
特に『墓地へゆく道』は大傑作です。唖然とするばかり。美しくて、最高に不気味です。イメージも言葉も凄まじい。テーマは「エロスとタナトス」だと言われても笑いませんね、これくらい凄いと。
私は七十年代後半に花開いた才能が少女漫画界を賑わしていた時代に最も少女漫画を読んでいました。当時の少女漫画家さんたちは岡田さんの美意識の影響をかなり受けていたのではないかと思います。西欧の街並みの描き方、雰囲気の作り方、やたら見覚えがあります。地上の国ではない「西欧」の夢幻イメージ、そうか、出所はココか、と今になって膝を打ちました。しかしある時代の少女というのは非常に教養主義的だったんですね。岡田さんは北海道の片田舎でヘルマン・ブロッホなんか読んでいた少女だったんですね。いやはや。



煙に巻かれ
おすすめ度 ★★★★★

著者の描きたいものが明確なため、1作品ごときれいにまとまっている。
とはいえ、
適当に開いたページから読み進めても楽しめてしまうという、何とも変わった魅力のある読みもの。

おもしろい!!

それが、20代前半男のファーストコンタクトの正直な感想。見も蓋もありません。
煙に巻いてるようですが、立ち読みではわかりません、寝そべりながら読みましょう。



万年思春期現象
おすすめ度 ★★★★★

この本の出版を機に作者を知ったけれど、読んでいて懐かしい感じがした。
小さい頃にテレビで見た異国のアニメを彷彿とさせるような変な気分。

なんとなく友達の少ない読書好きの頭でっかち気味少女が見た夢(悪夢?)を覗いているような気持ちになる。
実際、夢に見た風景をコマに描いているそうだ。

最初は表紙の絵と全然違うタッチのマンガばかりだったのでびっくりしたけれど、全体的にある空気は同質のものだと思いますので満足の一冊です。


詩情。
おすすめ度 ★★★★★

岡野史子に触れてみてほしい。
ただ気をつけてほしいのは、分かりやすくエンタテイメントな、
いわゆる「マンガ」を読む心づもりでは読みこなせない作品世界だということ。
…なんて言うと偉そうだけど。詩情の世界なんです。もう、ぎゅう詰め。詩情が。
岡田史子の作品は「実験的」で、彼女のデビューは「事件」だったらしい。

ただそれは絵柄がどうの、ということよりも「詩情」について言われたことでもあったんじゃないだろうか。
わたしはリアルタイムの読者ではないし、当時まだ生まれてないので「時代の空気」というものも分からない。
それでも岡田史子の作品にグッと心を持っていかれるのは、その「詩情」の作用だろうと思う。

岡田史子を知らないでいるのは、もったいない。
この本をきっかけに、あらたな愛好家が生まれることを望みます。


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