なぜだろう・・不当な刑であるが、「罪なくして処された」とは思えなかった。おすすめ度
★★★☆☆
フランコ政権下のスペイン。独裁政権を倒すべく反体制活動に若くして身を投じた青年の運命を描いたドキュメント。
ニ次大戦が終結してから30年近くも経過した1970年代になってもスペインでは未だファシスト政権が独裁体制を敷いていた・・・。
ドイツのヒトラーとも手を組んでいたこともあるフランコは本来なら倒されるべき相手なはずなのは、「同じ穴のムジナ」でありながら戦勝国の一員として生き残り称賛を浴びたソビエトのスターリンと変わらない。
反体制活動をする・・・・というにも要るのは「金」。
銀行強盗を繰り返して奪った金で当初は上々の滑り出し。
だが、そんな事がいつまでも続くはずはなく、取り締まる側の逆襲に徐々に追い詰められてくる。
生じる「仲間割れ」。「資金難」。「意欲の減退」。
それらの末に訪れる「崩壊の時」。
「衆寡敵せず」(小人数では多数に敵わない)の言葉にあるように、活動の割には思想も仲間も広がらなかったというような結果論になった印象がした。
不当な政権に抗する手段が「非合法」である以上、リスクは承知しておくべきだが・・・どうもサルバドールにはその意識が欠けていた部分があるように思う。(元恋人を仲間との連絡役に使おうとするなど)
刑は確かに不当だが、強盗を繰り返していたサルバドール一味にはどうしても同情できない部分もあることも事実であるし、彼の死を反体制側もまるで「殉教者の死」のように祭り上げた面も否定できないと思うので、この評価。悪い作品ではないけど。
監督のメッセージが伝わる秀作
おすすめ度 ★★★★★
フランコ独裁政権末期のスペインで反政府活動をした
青年サルバドールの生涯を扱った作品。
まず、脚本がいい。前半では活動家たちと警官隊の銃撃戦や
逃走シーン、デモ行進など迫力ある場面が続き、見る者を
ぐいぐいと物語の中に引き込んでいく。
そして後半では不当な裁判で極刑を言い渡されたサルバドールと、
彼を支える家族や友人たちとの絆が丁寧に描かれ、心を激しく
揺さぶられる。
刺激的で感動的な作品だ。
役者もよかった。刑罰への不安と恐怖におびえながらも
感情的にならず、淡々と刑務所で過ごすサルバドールの複雑な心境を
ダニエル・ブリュールが好演し、後半部分は涙が止まらなかった。
この映画は実話をもとにしている。自由を求めた普通の若者
サルバドールの生き方を描くことにより、監督は「主人公の正当性を
明らかにすることを目指し、不正行為に対するメッセージを発信した」
という。その意図は十分に伝わった。