空洞ですねおすすめ度
★★★★★
ミニマルで無機質なロックと言えば、
ニューウェーヴ、ノーウェーヴ、ジャーマンプログレ・・など思い浮かびますが、
個人的にはPILもNEU!もSUICIDEも糞喰らえ!的な、凄いモノを聴いてしまった、という感想。
その名の通り、がらんがらんの空洞。でもこの艶ある、命ある感じはなんなんだろう。
最近はスイートソウルにハマっているという坂本氏のSo Sweetな歌声がそうさせているのか。
未だに新しい音を生み出し続けるモンスターバンドに驚嘆。
大人のロックおすすめ度
★★★★★
肉体と精神をなし崩し的にとろとろにしてしまう傑作が誕生した。これまで彼等の最高傑作だと信じていた「しびれ」「めまい」を超えた。凌駕した。
空洞です、なんてのたまう坂本の言語感覚に脱帽であるが、何よりもそのサウンド構築能力に感嘆の言葉を禁じ得ない。ミニマル・ビートによるサイケ感覚が横溢する音楽だ。坂本はプロ中のプロだな。ゴルゴ13ばりの百発百中のスナイパー。あるいは、ぶれることを許されない明石の天文台の時計。これほどまでに、大人のロックに浸りたい欲望を叶えてくれるバンドはそうはいない。恐らくおっさんだけが味わうことが出来る、失望感、虚脱感、焦燥感、絶望感、そのすべてを表現してくれる。
ソリッドな轟音ロックだけが、ロックのダイナミズムを醸し出せるとは限らない。削ぎ落とされたビートだけが打ち出すことの出来る「凄い音」が歴然として存在するのだ。ダルなパンチがボディーブロー的に身体に効いてきて、もはや五臓六腑を起立させるだけのパワーなど何処にも残存していない。容赦ない。俺は何のためにゆら帝を愛してきたのかちょっと不安になるが、それは、こんな猛獣・珍獣を愛してきた俺が悪いのさ、と変な納得をしてみる。
表題曲のギターリフは素晴らしい。それは決して変な音ではなく、正統派な意味で素晴らしい。ソウルフルな匂いもする。坂本のボーカルも何か和製マービン・ゲイみたいで良い。1曲目と、最後のこの曲は割合非実験的、つまりは伝統的な面持ちで、面の皮が厚くて、空洞の表面の役割をしているのだと勝手に考えている。2曲目から9曲目の、あるようで無い「中身」が、これが実は恐ろしいことになっているから、皆さん聴いてください、と専属プロモーターよろしく言ってみたくなる。
これは一体・・・?
おすすめ度 ★★★★★
まず、ゆらゆら帝国の音楽を少しでも知ってる人なら多少なりとも驚くであろう一枚。
更に、知らない人にとっては正に「新感覚」を体験できるであろう一枚だ。
ゆらゆら帝国がメジャーシーンに来てから10年近く経つが、まったく評価と
ポジションが変わってないことがすごい。やっている音楽自体は変化しつつも本人たちの
立ち振る舞いや音楽的な凄みは保ちつつあるという事だろう。
雑誌でゆらゆら帝国の写真を見るたびに圧倒されるのと同じだ。見慣れない、というか・・。
このアルバムはまさにそんなゆらゆら帝国の「個性」が完全に溢れた様な一枚だ。
正にどこから聴いても坂本慎太郎という男の作家性が垣間見える。素晴らしい。
今までとの変化としてはまず激しい爆音の曲がなく、
全体的に無機質で音数が少なく、ヒリヒリしたサウンドになっている。
こう書くとひどく地味で寂しい感じに思えるがこのバンドがそれをやると
刺激的で確かに、衝撃を受ける唯一無二の音楽になってしまうのだ。
これは自分も予想外で、「こんなに音数少ない。でもこれもゆらゆらだ!」とはっきり
思える芯の強さが存分に出ている。と、感じる。
「笑顔で最高って言えるか?」という歌詞にドキっとした「できない」という曲は
シンプルの極みというか、リフだけで進めてくような作りで新鮮。
またこの曲だけではなくこの他にも骨格だけで出来たような曲があり
それを新鮮でキャッチーなものにしているのだから悪いはずがない。という点で
少しでも気になる、またはこういう音楽を聴きたいと思う人は
間違いなく手を出したら中毒になることうけあい。
ちなみに今回は「おはようまだやろう」「空洞です」で珍しくサックスを取り入れていたり
「美しい」「なんとなく 夢を」はアルバムにきっちり合わせた作りに変わっていたり
します。特に「美しい」のアルバムヴァージョンの不気味なコーラスがお気に入り。